前日に無事納棺の儀式を終えることができました。

引き続き、遺族の同意を得て撮影しプライバシーに配慮しつつ
今回小生が参列した台湾の葬儀における副葬品に触れたうえで
頭旬(Tóu xún=初七日)を紹介します。
拜拜=参拝

祭壇が設けられ、この日から故人の知人友人や遠方に住む親族の
拜拜(Bàibài=参拝)を受けることができるようになりました。
台南市公営斎場の開放時間である8:00~17:00の間で
遺族が交代でここに滞在し参拝者に対応します。
白包=御仏前
参拝者から白包(Bái bāo=御仏前)を受ける場合
遺族代表が謹んでこれを受け
禮簿(Lǐ bù)というノートに参拝者の名前と金額を記入し

一連の葬儀が全て終わってから後日香典返しをします。

白包(Bái bāo=御仏前)は読んで字の如し
白い封筒にお金を包んで遺族に渡す御仏前のことで
包む金額の相場は故人や遺族との関係性で多少変わるものの

必ず奇数になるように新台湾ドルのお札を包むようにしましょう。
対して、中華圏でおめでたい席に渡す紅包(Hóngbāo)は

演技のいい数字とされる偶数の金額を必ず包みます。
元寶=金塊を作る

小生が今回参列したジャックさんの葬儀では
納棺から出棺・火葬されるまで6日間期間が空きましたが
この間遺族は祭壇前に設けられた簡易的な机と椅子に座り
故人に想いを馳せつつ金銀紙(Jīnyín zhǐ=お金を模した黄色い紙)を

折り紙のように決まった手順で折っていき
このような金塊を模した元寶(Yuánbǎo)を作っていきます。

業者に話によると、以前はかなり精巧に作る必要があったそうですが

多少形が崩れたり紙が破れたりしても問題ないとのこと。
要は気持ちです。

↓の黒い袋全て元寶がこんもり詰まっています。

総額なんと1,000万台湾ドル=約4,800万円分のお金の代わり
火葬前日に全て燃やし故人に供します。
パスポートや家も燃やす
出棺後に燃やすのは元寶だけに限りません。

極楽へ向かうパスポート・片道航空券・小切手に始まり

クレジットカード・キャッシュカード・悠遊カードを模したものから

新台湾ドルと米ドルを模した現金の札束はもちろん
お酒・お茶・スポーツドリンクに至るまでびっしり。

極め付きは三食昼寝付きの自宅も。

専門の業者に依頼して準備するこうした副葬品は全て紙でできていて
出棺後火葬直前に業者に依頼して元寶含め全て焼却し
故人が極楽で何不自由ない生活を送れるよう祈ります。
斎場内では肉を食べない
日本でも近親者が亡くなった場合に一定期間喪に服し
殺生を忌避するために肉を食べない習俗がありますが台湾でも同様。
「別に俺ベジタリアンじゃないよー」や「喪に服すとか関係ないよー」
という人でも、少なくとも斎場滞在時は肉食NG。

上述した通り元寶をせっせと折っていると
弁当や飲み物の仕出しをする業者がチラシを置いていくので
電話して弁当を予約すると指定した時刻に届けてくれます。

↑これらすべて素食(Sùshí=ベジタリアン料理)で
右下のお肉に見えるのは豆皮(Dòu pí=いなりの皮)で作られたもの。
これとは別に遺族や参拝者が故人に食べ物・飲み物を供したい場合は
一旦祭壇にこれを置き謹んで故人に捧げたうえで

30分~1時間ほど経過した後に祭壇からこれを取り
遺族が食べたり飲んだりしても構わないそうです。
もし誰も食べない場合は、建物の外にあるベンチにこれを置けば

こちらも専門の業者が回収し家畜の飼料として再利用されます。
サステナブルですね。
頭旬=初七日
遺族は参拝者の来訪を受けつつ元寶を折り続け
故人が亡くなってから7日目に頭旬(Tóu xún=初七日)を迎えます。
事前に遺族がお願いした師父(Shīfù=お坊さん)が斎場に到着後
遺族全員に念仏が書かれた本が渡され

遺族総出で誦經(Sòng jīng=読経)です。
念仏には注音(Zhùyīn=ボポモフォ、読み仮名に相当)がふられ
小さい子どもでも読めるようになっています。

午前10時から始まった読経は途中10分ほどの小休憩や
お昼のランチ休憩をはさみ午後2時まで続けられました。
その後、ご遺体を納棺して留め置かれた室内の斎場から

葬儀が執り行われる半屋外の場所へ棺を移動させます。
このとき遺族は↓の写真のように麻衣(Máyī)と呼ばれる
葬儀用の装束に着替えますが

(台湾人親族の葬儀に参列した際の写真、2014年2月撮影)
今回小生が参列したジャックさんの葬儀では
服を着替える必要はなく、服の上から被り物をするだけでOKでした。

装束の色の分類は故人との血縁関係で決まります。
いずれも故人から見て以下の通り。
遺屬(Yíshǔ):故人の家族。配偶者も子も小麦色の装束をかぶる。
晚輩(Wǎnbèi):甥や姪など故人の一つ下の世代。白い装束をかぶる。
平輩(Píngbèi):いとこなど故人と同じ世代。男性は白いタスキを左肩から右腰に掛け、女性は白い装束をかぶる。
長輩(Zhǎngbèi):両親や叔父叔母など故人の一つ上の世代。普段着のまま。
先頭のお坊さんが念仏を唱えながら
貨車に載せたジャックさんの棺を業者が押し
続いて棺のすぐ後ろを線香を持った遺屬が歩き
その後を平輩&晚輩そして長輩が3人1列になり
斎場敷地内を歩いて告別式が行われる場所へ到着。

合掌、礼拝。
明日はいよいよ告別式・出棺・火葬です。
あとがき

日本でも馴染みのある人が多い所謂「般若心経」は
もちろん台湾でも有名で斎場の壁に貼られていました。
羯諦羯諦,波羅羯諦,波羅僧羯諦,菩提薩婆訶。
(ぎゃーていぎゃーてい、はらぎゃーてい、はらそうぎゃーてい、ぼじそわか。)
往き往きて 彼岸に往き
完全に彼岸に到着したものこそ さとりそのものである。
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